真珠ができるまで People + Nature = Gem

今からおおよそ140年前、東京帝国大学教授の箕作佳吉先生とそのチームにより、伊勢志摩地域で、初めて成功した養殖技術は、伊勢志摩の人々の手により、中国や南太平洋、東南アジアなど世界中に広がりり、真珠産業界に大きく貢献しました。また、伊勢志摩で生まれ育った御木本幸吉さん(インターナショナルジュエリーブランド・MIKIMOTOの創設者)が、19世紀後半にパリ万博で世界で初めて「日本の養殖真珠」を紹介したことにより、歴史上ペルシャ湾が中心だった真珠貿易は、19世紀以降、日本に移り、日本は、真珠産業の中核を担うことになりました。

日本の三大リアス式海岸の一つである伊勢志摩地域は、大小多数の島々と深い入り江により、非常に海が穏やかで、周りが山々に囲われていることから、植物性プランクトンが豊富で、あこや貝を始め、多くの魚介類を育んできました。この穏やかで豊かな海こそが、美しいあこや真珠の輝きを育むのです。

また、伊勢志摩は、真珠養殖発祥の地だけではなく、5000年の歴史を持つ海女文化の発祥の地でもあります。近年は、海洋環境の悪化により、海女業で生計を立てるのが難しく、高齢化と人口減少により継承が難しくなっていますが、海女の存在こそが、ここ伊勢志摩での天然のあこや真珠の発見につながり、それが、箕作教授始め多くの人の養殖真珠を誕生させるという夢を、伊勢志摩で実現させることに繋がりました。

伊勢志摩で誕生した養殖技術とは

【人口採苗】

3月の上旬、貝殻内面の色が美しいもの、殻幅の厚いものなど母貝にふさわしい貝から卵子と精子を選別し、水の中で人工的に受精させます。その後、誕生した稚貝をプラスチック製の網に付着させ、水槽の中で育てていきます。

【母貝の養殖】

4月から5月の上旬、2mmほどに成長した稚貝は養殖カゴに移され、海の中に移動し移植が出来る大きさに成長するまで3-4年の年月をかけて育てます。その際重要となってくるのが貝の表面の掃除です。貝の表面に付いた海藻やフジツボ、カキと言った付着物は貝の成長を妨げてしまうのでこまめに掃除をしてあげる必要があります。

【インプラント手術前準備】

母貝が挿核手術の可能な大きさにまで成長すると、調整ボックスと呼ばれる箱に入れられます。この箱はとても通気性が悪く貝はだんだんと弱っていきます。貝にとっては過酷な状況ですが、これはこの後の、陸上での大きな手術に耐えれるように、また貝の口が自然に開くことで傷つけることなく手術を行うためにとても重要な工程になっています。

【養殖に必要なもの】

真珠の養殖には核と真珠層を作り出す細胞のピースが必要です。

あこや真珠の核は主にアメリカミシシッピ川で採れるどぶ貝の貝殻を削り、そして作りたい真珠の大きさに合わせいろんな大きさの球体にしていきます。

そして、貝ヒモやミミと呼ばれる“外套膜”と呼ばれる膜で作られたピース。この外套膜は貝殻を作る働きのある膜で、この膜によって分泌された成分により核の周りに真珠層を形成します。つまり、外套膜の作用により、真珠は、必ず母貝と同じ色になります。(母貝の色と異なる場合は、人工的に加工されたものだといってよいでしょう)

【インプラント手術】

 4月から7月になるといよいよ挿核シーズンです。人間と同じで貝は、一つ一つ違います。この時、核とピースが離れてしまうと良い真珠はできません。貝を傷付けないように、核とピースがしっかりと密着するように一つ一つの貝をしっかりと観察し、注意深く作業をしていきます。

【養生】

 人間と同じで、大きな手術を終えたあこや貝には傷を癒し体力を回復する時間が必要になります。網に貝を並べ、穏やかな流れの中でゆっくりと回復を待ちます。

【沖出し】

 貝も生きているので、移植された核を異物と認定し外へ出そうとしてしまう時もあります。そこでキズの回復した貝はX線を使い、正しい位置に核があるかどうかの検査をします。そうして検査に通った貝は『吹き流し』と呼ばれる網に入れられ、穏やかで栄養豊富な海の中で真珠を育てていきます。

【浜上げ】

 核入れをしてから数年、いよいよ浜上げ、収穫の時期になります。収穫は12月の初めごろから始まり、この作業は真珠養殖のクライマックスとなります。この時期は、1年で最も水温も低いため、よく引き締まって綺麗な真珠ができます。

真珠はほかの宝石とは異なり、カットされたり磨かれたりすることにない、海と貝、そして人の手との共同作業によってのみ作られる「生きている宝石」です。

このように丹精込めて作られた真珠のうち、宝石として使用されるのはたったの28%しかありません。しかしその残りの72%は捨てられてしまうわけではなく、粉末にして化粧品や薬品に加工されます。

また、貝殻は工芸品やボタンの原料に、真珠を取り出した後の身は魚の餌や肥料に、そして貝柱はお刺身やてんぷらなどにして食べられます。

このように真珠は一切捨てることの無い、無駄のない産業であり、SDGsに沿った産業であると言えます。

当店では大画面で映像を見ながらより詳しい解説を聞いていただけます。また、真珠の粉入りのお茶の試飲も楽しめます。当店へお立寄りの際は、真珠のプロと共に「学ぶ」経験もお土産にいかがでしょうか?伊勢志摩で、お待ちしています。

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